不正咬合を放置しておくと以下の障害や問題がおこります。
1.審美的障害(見た目の美しさ)
矯正治療を希望する患者さんのほとんどは、見た目が気になることを訴えて来院します。
たとえば、「前歯が反対に咬んでいる」「歯並びが凸凹している」、「八重歯が目立つ」、
アゴが出ている感じがする」、「顔が曲がっている」といったことです。
年齢が進むにつれて対人関係を意識するようになると、歯並びや顔貌を意識しすぎて「前歯を見せるのが恥ずかしい」
「大声で笑えない」などのストレスを抱えてしまうことや
劣等感・控え目・消極的など性格形成への影響が生じることがあります。
不正咬合を治すことにより、自分の容姿に自信を持ち、
今までのコンプレックスを解消できることも、 矯正治療の重要な役目のひとつです。
2.生理的障害(健康に関わる問題)
@咀嚼機能障害(良くかめない)
口は食べ物を咬むための咀嚼器官として重要な役割を持ちます。 不正咬合により、前歯で食べ物を咬み切れなかったり、
奥歯の接触面積が小さいために効率良く咬むことができないといった問題があります。
A発音障害(うまくしゃべれない)
口は構音器官(音を作る)としても重要な役割を持ちます。 不正咬合により
・ 話しづらい
・ 発音しづらい(特にサ行、パ行など)
・ 口唇が閉じづらい
・ 口びるが八重歯にひっかかる
ことがあります。
B顎骨の成長におよぼす影響(子供の成長への影響)
成長期の子供の不正咬合を放置しておくと、歯並びや顎骨の成長がより悪い方向にすすみ 重度の不正咬合となることがあります。
矯正治療により早期に咬合異常を改善することによって 本来の成長誘導を手助けできます。
これにより不正咬合のままであれば後に必要となるであろう
歯科治療や精神的な苦痛を減らすことができるのです。
3.病理的障害
歯並びが悪いため
・隅々まで歯を磨けない
・食べ物がはさまりやすい
・唾液による自浄作用の低減がおこる
等の問題からむし歯、歯肉炎、歯周病(歯槽膿漏)になりやすく、進行を早めることがあります。
歯の早期の喪失によって隙間(空隙)ができている場合、
隣の歯がその隙間にむかって傾いてきたり対咬歯がでてきて上下の隙間が足りなくなったりします。
これにより虫歯治療等にも影響がでます。
・理想的な歯の修復や歯科治療が妨げられる。
・歯を削る量が多くなる
・異常な咬合圧がかかり歯の周囲の組織にダメージをあたえる
といった障害が発生します。
また、咬み合わせが悪いと
・良く噛めない
・全身の姿勢のバランスをくずし、頭痛や肩こりなどの原因になる。
さらに下顎の位置異常は関節に負担をかけ顎関節症をおこすこともあります
利点
・顔面や顎骨の成長を誘導できる
・永久歯への交換を利用できる
・矯正装置の選択範囲が広い
欠点
・本人の自覚が低い(協力度が低い)
・プラークコントロールが難しい
・治療期間が長い
2.成人からの矯正治療
利点:
・本人の自覚が高い(協力度が高い)
・プラークコントロールが容易
欠点
・社会生活(仕事、結婚、転居、妊娠など)との関わりが複雑
・全身疾患、う蝕、処置歯、欠損歯、歯周病、顎関節症などによる制限がある
・顔面や顎骨が完成しており成長誘導できない
・骨格性のズレが大きい場合は外科的矯正治療の選択も考慮する
まだ小さいお子様が歯科医院や3歳児検診で将来的な不正咬合の可能性を指摘されたときに
何歳くらいから矯正歯科医院で相談をして治療を始めればよいのでしょうか?
お母様達には気になるところだと思います。 矯正治療には歯を動かす矯正力と骨の成長誘導を行う顎整形力を用います。
ところで骨はそれぞれの場所によって発育の時期に違いがあります。
おおまかに分けると脳頭蓋と呼ばれる頭の部分が初めに成長のピークをむかえ、
次に上顎の骨が永久歯が生えそろう頃まで発育します。
その後身長が伸びる時期に下顎の骨の成長のピークが認められます。
つまり頭、上顎、下顎の順に顔は作られていきます。
幼児の顔と成人の顔を比べるとイメージしやすいと思います。
例えば前歯が反対に咬んでいるお子様の場合、上顎の発育の時期にそのままにしておきますと、
上顎の成長が抑えられ、その後で下顎の骨が成長のピークを迎えると
骨格的な上下のズレが大きくなってしまいます。
上顎の発育の時期に咬みあわせを改善しておくことで不正咬合がひどくなるのを抑えることができます。
こうした発育に合わせた時期に成長誘導をおこなうのも矯正治療の役目です。
乳歯列の頃から上下の咬みあわせのズレが著しい場合、骨格的なズレがある場合はもちろん
矯正歯科を早めに受診されることをお勧めします。
しかし骨格的な問題がなく、現在は普通に咬んでいるけれど
乳歯列にまったく隙間がない(通常は霊長空隙や発育空隙といった隙間が見られます)とか、
レントゲンを撮影したら前歯が大きく将来的に歯が生える隙間が足りないといわれたような場合は
いずれ歯列を拡大する必要があるとは思いますが、
お子様が矯正装置を使えるようになる頃まで待ってから治療を始めることもあります。
それでも前歯が永久歯に生え変わりはじめ、6歳臼歯が出てきた頃には相談されることをお勧めします。
発育の時期をのがすと効率的に成長誘導がおこなえなくなります。